高圧ガス保安法
法の概要
(法第一条) この法律は、高圧ガスによる災害を防止するため、高圧ガスの製造、貯蔵、販売、移動その他の取扱及び消費並びに容器の製造及び取扱を規制するとともに、民間事業者及び高圧ガス保安協会による高圧ガスの保安に関する自主的な活動を促進し、もつて公共の安全を確保することを目的とする。”高圧ガス”の定義
法条文にてその圧力や状態などが厳密に定義されています:第二条 この法律で「高圧ガス」とは、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
一 常用の温度において圧力(ゲージ圧力をいう。以下同じ。)が一メガパスカル以上となる圧縮ガスであつて現にその圧力が一メガパスカル以上であるもの又は温度三十五度において圧力が一メガパスカル以上となる圧縮ガス(圧縮アセチレンガスを除く。)
二 常用の温度において圧力が〇・二メガパスカル以上となる圧縮アセチレンガスであつて現にその圧力が〇・二メガパスカル以上であるもの又は温度十五度において圧力が〇・二メガパスカル以上となる圧縮アセチレンガス
三 常用の温度において圧力が〇・二メガパスカル以上となる液化ガスであつて現にその圧力が〇・二メガパスカル以上であるもの又は圧力が〇・二メガパスカルとなる場合の温度が三十五度以下である液化ガス
四 前号に掲げるものを除くほか、温度三十五度において圧力零パスカルを超える液化ガスのうち、液化シアン化水素、液化ブロムメチル又はその他の液化ガスであつて、政令で定めるもの
物質によらず、この定義に当てはまるものは高圧ガスとなり(ただし一部適用除外あり)、例え 空気 でも、十分に圧縮をすれば法規制の対象になります。
なお、”ゲージ圧力”とは大気圧を基準とした圧力、すなわち ゲージ圧力 = 絶対圧力 – 大気圧 です。また、第四号の “政令で定めるもの”とは 液化シアン化水素、液化ブロムメチル、液化酸化エチレンの 3つです。
また、これとは別に、本法に従属する 一般高圧ガス保安規則 にて、可燃性ガス、毒性ガス、特殊高圧ガス、不活性ガス、そして特定不活性ガスという分類も定められています(第二条)。
物質例:
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可燃性ガス: アセチレン、アンモニア、酸化エチレン、シアン化水素、水素、ベンゼン、メタン 等
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毒性ガス: 一酸化炭素、塩素、五フッ化リン、シアン化水素、フッ素、ホスゲン、ホスフィン 等
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特殊高圧ガス: アルシン、ジシラン、ジボラン、セレン化水素、ホスフィン、モノゲルマン、モノシラン
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不活性ガス: ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン、窒素 等
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特定不活性ガス: フルオロオレフィン千二百三十四yf、フルオロオレフィン千二百三十四ze、フルオロカーボン三十
義務の例
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高圧ガスの製造をしようとする者は、事業所ごとに、あらかじめ都道府県知事等の許可、または都道府県知事等への届け出が必要です。製造する高圧ガスの種類、製造方法、設備の変更をする際も同様です。また、法令で定められる事業者は事業所ごとに保安統括者等を選出し、こちらも都道府県知事等に届け出をしなければなりません。
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高圧ガスを販売しようとする者は、販売所ごとに、あらかじめ(事業開始の日の20日前まで)に都道府県知事等に届け出をしなければなりません。また、取り扱う高圧ガスによっては販売主任者を選任し、こちらも都道府県知事等に届け出をしなければなりません。
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高圧ガスを輸入した場合は、まずは輸入をした高圧ガス及び容器について、陸揚げ地の都道府県知事が行う輸入検査を受けなければなりません。
高圧ガスの容器
高圧ガスの容器にはとても厳しい規定が課されています。具体的な規定は本法に従属する 容器保安規則、また 日本産業規格等に細部にわたって示されています。例えば、容器の製造においては条文にその技術上の基準が示されています(容器則第三条)。
また、容器には、その表面積の 1/2以上に、内容物に応じて指定された色を塗り、そのガスの名称と、その性質を示す指定された文字を表示しなければなりません(容器則第十条)。
(一例)
ガスの種類 | 色 | 性質を示す文字 | |
可燃性ガス | 水素ガス | 赤 | 燃 |
メタン | ねずみ色 | ||
アセチレンガス | 褐色 | ||
毒性ガス | ホスゲン | ねずみ色 | 毒 |
液化塩素 | 黄 | ||
可燃性・毒性ガス | シアン化水素 | ねずみ色 | 燃 毒 |
液化アンモニア | 白 | ||
その他のガス | 酸素ガス | 黒 | (表示なし) |
液化炭酸ガス | 緑 |
この他にも、所有者の氏名等、表示しなければならない事項はまだいくつかあります。
その他、検査、再検査、刻印、充填、処分等、規定されている事項は膨大です。